滋賀の少女時代と漫画への投稿
昭和48〜
滋賀県大津市に生まれる
三姉妹の末っ子で、10歳上と5歳上の姉が漫画好きだった影響で幼い頃から漫画に親しんだ。母子家庭で、本人によれば小学4年か5年の頃に母親が家を出て、その後は児童養護施設で育った。鍵っ子で、子どもの頃は毎日のように本屋に立ち寄っていたという。
中学時代、少女漫画誌「マーガレット」に漫画を投稿し始める
中学に上がると友人に薦められた氷室冴子の少女小説で小説の面白さを知ったが、自分で表現したいのは漫画で、「マーガレット」に少女漫画を投稿してプロを目指した。小説家になりたいと思ったことは小さい頃から一度もなかったと語っている。
10代半ばで漫画家の夢を諦める
投稿はAクラス入賞止まりで、編集部からの厳しい講評に心が折れ、才能がないと思って10代半ばで諦めた。折れた気持ちは『銀河英雄伝説』などの二次創作に向かった。
音楽に熱中し、10代の終わりに滋賀から京都へ移り住む
漫画をやめた後は音楽と映画に熱中し、バンドがやりたくて京都の友人ができた。ライブハウスと映画館が近いという理由で滋賀から京都に引っ越し、以後は読書からも遠ざかって10年ほどの空白期間があったという。
BL作家・凪良ゆう
平成18〜
「小説花丸」2006年冬号に「恋するエゴイスト」が掲載され、デビュー
結婚して専業主婦だった30代、インターネットで『銀河英雄伝説』の記事を見て創作熱が甦り、漫画は描けなくなっていたので代わりに小説で二次創作を書き始めた。夢中で書く姿を見た家族にプロになればと言われ、白泉社のBL専門誌「小説花丸」に投稿し、3回目で入選して担当編集者が付いた。担当編集者の指導で雑誌掲載を目指し、同誌2006年冬号に中編「恋するエゴイスト」が掲載された。
『花嫁はマリッジブルー』で本格デビュー
白泉社花丸文庫から刊行した初の文庫本。当時のBLでは花嫁ものが流行しており、内容は花嫁もの、タイトルにも「花嫁」を入れることがデビューの条件だった。10代の頃に読んだ「ジュネ」と呼ばれたシリアスな世界とは違い、甘い作風と明確なハッピーエンドを求められ、条件を満たしながら自分のカラーを入れようと苦心したという。
本人レーベルや担当さんにもよると思うんですが、わたしの場合は縛りがきつくて、デビューさせてあげる代わりに内容は絶対に花嫁もので、本のタイトルにも「花嫁」という言葉を入れること、と言われていたんですよ。 出典
『恋愛犯 Love holic』を姉妹レーベルから刊行
デビューした花丸文庫が、シリアスな内容も書けるブラックレーベルを創刊し、そこでストーカーの話を書いた。本人はこの2冊目こそが自分のデビュー作だと思っていると語る。
『真夜中クロニクル』を刊行
デビュー版元以外にも執筆の場を得るようになった年に発表した作品。コメディとシリアスを色分けせずに混ぜたものを書きたかったのだと初めて分かり、縛られていたものが解放されていくのを感じたという。この頃から便箋1冊まるごと使って感想を送る読者が現れるなど、濃い応援を感じるようになった。
本人『真夜中クロニクル』を出した頃から、読者さんがものすごく濃く応援してくれるのを感じるようになったんですよ。 出典
『美しい彼』を刊行
吃音症で孤立する高校3年生の平良と、クラスの頂点に立つ清居の恋を描いたキャラ文庫の作品で、BLアワード2015で第1位を獲得した。BL時代の代表作となり、シリーズは後に累計55万部を突破する。BLの著書は43作に及び、新装版を含めて年に8冊出した年もあった。
一般文芸へ、そして本屋大賞
平成29〜
初の一般文芸作品『神さまのビオトープ』を刊行
デビュー10周年に講談社タイガから刊行した、幽霊の夫と暮らす妻を主人公にした連作ミステリー。一般で書くのはこれが最初で最後だろうと思い、持ち球を全部投げるつもりで書いたという。発売当初はなかなか売れなかったが、2年後の2019年に紀伊國屋書店梅田本店の書店員と講談社の編集者がフェアを仕掛け、数百部の重版から版を重ねて累計10万部を突破した。
本人一般で書かせてもらうなんて、これが最初で最後だろうと思ったんです。だったら後悔しないように、持ち球は全部投げるぞという感覚でした。 出典
『すみれ荘ファミリア』を刊行
BLも書き続けながら、富士見L文庫から一般文芸の2作目を刊行した。まかない付きの下宿を舞台にした群像劇で、家族で一緒にいるより他人同士で一緒にいる方が生きやすい、という自身の一般文芸作品に一貫するテーマを語っている。
『流浪の月』を東京創元社から刊行
9歳の少女・更紗と19歳の青年・文の同居を世間が誘拐と決めつけ、15年後の再会で2人が関係を問い直す物語。一般文芸では初の単行本で、東京創元社から単行本で勝負作をと言われ、BL時代の『あいのはなし』をベースに書き切ったという。刊行前から書店員の絶賛が続き、展開を広げた一部書店では9月第2週に文芸書の週間売上1位を獲得した。12月にはポプラ社から『わたしの美しい庭』を刊行し、同作は翌2020年に第11回山田風太郎賞候補となった。
『流浪の月』で第17回本屋大賞を受賞
一次投票477書店586人、二次投票300書店358人の書店員が選ぶ本屋大賞に、一般文芸で初めての単行本が選ばれた。初単行本での受賞は2009年の湊かなえ『告白』以来2度目だった。発表当日は新型コロナウイルスによる初の緊急事態宣言が出た日で、贈呈式は中止となり、書店員と壇上で記念撮影する夢はかなわず、翌日から多くの書店が臨時休業に入った。
本人1年間でとんでもない数の本が刊行されているので、ノミネートされただけで奇跡だと思っていました。受賞がどうとか考える余地もないくらいうれしかったです。 出典
受賞後第一作『滅びの前のシャングリラ』を刊行
1か月後に地球が滅亡すると決まった世界を描いた中央公論新社の作品。事前注文が予想を大きく上回り、発売前の重版で累計10万部を突破した。翌2021年には第18回本屋大賞にノミネートされ7位、キノベス!2021では第1位となった。
『美しい彼』が連続ドラマ化、MBSで放送開始
萩原利久と八木勇征のダブル主演で、MBSドラマ特区枠で全6話が放送された。書いた7年前はBLがまだニッチなジャンルで、ドラマ化の話に本当に驚いたという。第59回ギャラクシー賞マイベストTV賞グランプリを受賞した。
二度目の本屋大賞と映画化
令和4〜
映画『流浪の月』が公開
李相日監督、広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化され、横浜流星と多部未華子が共演した。撮影監督は『パラサイト 半地下の家族』のホン・ギョンピョ。第46回日本アカデミー賞で作品賞をはじめ6部門の優秀賞を受賞した。
『汝、星のごとく』を講談社から刊行
瀬戸内の島で育った暁海と、母の恋愛に振り回されて転校してきた櫂の約15年間を描いた長編。男性同士の恋愛を書いてきた自身にとって初めて男女の恋愛を正面から書いた作品で、2019年10月に初の打ち合わせをし、プロットの完成は2021年7月だった。今治出身の担当編集者の案内で刊行前年に現地を取材した。2022年末には第168回直木賞候補に選ばれ、王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位も獲得した。
『美しい彼』シーズン2が放送、4月に劇場版が公開
MBS/TBSドラマイズム枠でシーズン2が放送され、4月7日には大学卒業を控えた2人を描く『劇場版 美しい彼〜eternal〜』が公開された。
『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞を受賞
1月19日の直木賞選考会では受賞に至らなかったが、明治記念館で発表された第20回本屋大賞に選ばれた。2度の受賞は恩田陸に続く2人目で、初受賞から3年での再受賞は史上最短だった。発表時点で7刷40万部を突破していた。前回は緊急事態宣言で中止になった発表会に3年越しで臨んだ。なんの変哲もない男女の話が本当に面白いのかと書きながら何度も迷い、筆が止まったと語っている。
本人オーソドックスなものだからこそ、読んでもらうには筆力がいるんだなと痛感しましたし、何回も「もう無理!」と筆が止まりました。 出典
『汝、星のごとく』で第10回高校生直木賞を受賞
直近1年の直木賞候補作から高校生が選ぶ賞で、過去最大の43校の代表が議論して決めた。暁海と櫂と同年代の高校生の言葉が宝物になると受賞コメントを寄せた。
本人お知らせをいただいたとき、嬉しくて泣いてしまいました。暁海と櫂と同年代の高校生の皆さんからいただける言葉ひとつひとつが、わたしの宝物になります。これからも小説を愛してください 出典
『汝、星のごとく』の花火をモチーフにしたプロジェクションマッピングが六本木で投影
作中に描かれた愛媛県今治市の「おんまく」祭りの花火をモチーフにしたプロジェクションマッピング花火が、六本木 蔦屋書店のウインドウに投影された。
続編『星を編む』を刊行
『汝、星のごとく』で描ききれなかった3つの物語を収めた続編。前作は2023年の年間ベストセラー(日販調べ)で総合6位、単行本フィクション4位となった。
『星を編む』が本屋大賞にノミネート、受賞作続編としては史上初
続編が候補10作に入り、4月10日の発表で8位となった。この時点でシリーズ累計は60万部を超えていた。10月にはBLの『儘ならない彼 美しい彼4』を刊行した。
『汝、星のごとく』の映画化が発表される
藤井道人監督、横浜流星と広瀬すずの主演で映画化されることが分かり、2人が凪良原作の映画に出るのは『流浪の月』に続き2度目となった。撮影は7月に始まり、7月15日には文庫版が発売された。シリーズ累計発行部数は100万部を超えた。
出典eiga.com
愛媛県今治市の「今治エール大使」に委嘱される
『汝、星のごとく』の舞台となった今治市から、市の魅力を発信する大使に委嘱された。市役所で委嘱式が行われ、今治タオル生地のTシャツと名刺が贈られた。
本人今治市は私の”第二のふるさと”というくらい、取材で何度も訪れて好きになったまちなので、今治エール大使の役目をいただいて嬉しいです。これから今治市をたくさんPRしていきます。 出典
2年半ぶりの一般文芸書『多類婚姻譚』を刊行、2度目の直木賞候補に
結婚をテーマにした5編の短編集を講談社から刊行した。タイトルは動物や精霊と人間が結婚する昔話の類型「異類婚姻譚」から取り、自分なりに現代の結婚をさまざまな方面から書いてみようと思ったと語っている。同じ食品会社の社員や関係者が登場する各編が緩くつながる構成。6月には第175回直木賞の候補5作に選ばれ、2回目の候補入りとなった。7月15日の選考会では朝倉かすみ『けんぐゎい』が受賞した。
映画『汝、星のごとく』公開
藤井道人監督、横浜流星と広瀬すずの主演による映画が2026年10月9日公開。京都から島に転校してきた櫂と、島で生まれ育った暁海の15年間を描く。4月13日に公開日とティザービジュアル、予告映像が発表された。
出典eiga.com
京都で執筆を続ける
京都市在住。9月7日にNHK総合『あさイチ』で凪良のインタビューが放送され、9月には白泉社のアンソロジーに「18歳のショコラトル」を寄せた。