目次
区役所勤めを経て、無名塾に入る
昭和31〜
区役所勤めの20歳、舞台『どん底』を観る
長崎県立大村工業高等学校を卒業して上京し、千代田区役所の土木工事課に勤めていた。上京して2年後の20歳のとき、同僚から譲られたチケットで、仲代達矢がサーチンを演じる『どん底』を観る。本人は見終わった後、「演劇って、こんなに人の心を動かすものなのか」と感じたと振り返っている。
仲代達矢が主宰する無名塾に合格
スポーツ新聞で塾生募集の告知を見て審査を受け、約800人の応募者から4人の合格者に選ばれた。芸名は、前職が役所勤めだったことと、役どころが広くなるようにとの願いから仲代が付けた。入塾式には2時間遅刻し、初日から仲代に叱られている。
本人歴代の塾生の中で一番怒られているのではないかと思うぐらいによく叱られました 出典
映画『闇の狩人』とドラマ『アマゾンの歌』でデビュー
入塾の翌年、仲代の主演作『闇の狩人』で映画に初出演した。10月6日放送のフジテレビ『アマゾンの歌』がテレビデビューで、仲代の付き人兼移民Aの役だった。
朝ドラ『なっちゃんの写真館』に特攻隊員役で出演
NHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』で特攻隊員・香山少尉を演じ、この出演が転機になったとされる。同じ年、大河ドラマ『獅子の時代』にも自由党員の役で出ている。
信長と武蔵、テレビの時代劇から映画の主演へ
昭和58〜
大河ドラマ『徳川家康』で織田信長を演じる
1981年の大河ドラマ『おんな太閤記』で織田信長の三男・信孝を演じたことがプロデューサーの渋谷康生の目に留まり、『徳川家康』の信長役に抜擢された。野性味のある信長は人気を集め、この役でテレビ大賞の新人賞を受ける。役所広司の名前はこの役で世間に広まった。
NHK『宮本武蔵』で初めて主演
NHK新大型時代劇『宮本武蔵』で主人公の武蔵を演じ、初めて主演に抜擢された。放送は1985年3月13日まで続く。この年、前年の『徳川家康』の信長役でエランドール賞の新人賞も受けている。
時代劇『三匹が斬る!』で久慈慎之介を演じる
テレビ朝日の時代劇『三匹が斬る!』で、久慈慎之介(千石)を演じる。シリーズは1995年の『痛快・三匹が斬る!』まで続いた。この年はNHK連続テレビ小説『チョッちゃん』にも神谷容役で出演している。
映画『オーロラの下で』で田宮源蔵を演じる
映画で初めて主演したのは1988年、西村京太郎の小説を山下耕作監督が映画化した日本・スイス合作『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』の関谷海軍中佐役だった。1990年1月にはテレビ東京の『燃えよ剣』で土方歳三を演じ、主演している。『オーロラの下で』で田宮源蔵を演じ、この作品で、翌年の第14回日本アカデミー賞で初めて優秀主演男優賞を受ける。
細野辰興監督の『大阪極道戦争 しのいだれ』に主演
バブル経済崩壊後の大阪を舞台にした『大阪極道戦争 しのいだれ』で、天王寺の吉留組二代目組長・吉川一平を演じた。
原田眞人監督の『KAMIKAZE TAXI』で寒竹一将を演じる
原田眞人監督の『KAMIKAZE TAXI』で寒竹一将を演じ、この作品で翌年の第50回毎日映画コンクールの男優主演賞を受ける。
『Shall we ダンス?』とカンヌのパルム・ドール
平成8〜
『Shall we ダンス?』などの主演で、その年度の主演男優賞を総ざらい
周防正行監督の『Shall we ダンス?』で、社交ダンスに魅了される真面目なサラリーマン・杉山正平を演じ、作品は大ヒットを記録した。同じ年の細野辰興監督『シャブ極道』、小栗康平監督『眠る男』の演技とあわせて、その年度の主演男優賞を総ざらいし、翌年の第20回日本アカデミー賞では最優秀主演男優賞を受けた。一躍映画スターとして脚光を浴びた。
主演作『うなぎ』がカンヌでパルム・ドール
今村昌平監督の『うなぎ』に主演し、作品は第50回カンヌ国際映画祭で作品賞にあたるパルム・ドールを受けた。今村は表彰式の前に帰国しており、休暇中にパリにいた役所が代理でカトリーヌ・ドヌーヴからトロフィーを受け取った。日本公開は5月24日。この年は森田芳光監督の『失楽園』でも主演し、その年の邦画として大ヒットを記録する。前年に続き、2年連続で20以上の国内映画賞を獲得した。
『CURE』が公開、東京国際映画祭では最優秀男優賞
黒沢清監督の『CURE』で高部賢一を演じ、12月27日に公開された。公開に先立ち第10回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、役所は最優秀男優賞を受けている。
『金融腐蝕列島〔呪縛〕』で師・仲代達矢と対峙する
総会屋への不正融資疑惑に揺れる大手銀行を舞台に、真相究明に立ち上がる中堅行員の北野を主演で演じた。不正の黒幕である相談役を演じたのは仲代達矢で、同じ無名塾出身の若村麻由美もニュースキャスター役で共演している。
『赤い橋の下のぬるい水』でシカゴ国際映画祭の演技賞
今村昌平監督と再び組んだ『赤い橋の下のぬるい水』で、シカゴ国際映画祭の演技賞を受ける。この年に公開された青山真治監督の『EUREKA』では沢井真を演じ、作品はカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞とエキュメニカル審査員賞を受けている。
『SAYURI』でハリウッド映画に初出演
これより前、『ラストサムライ』では渡辺謙が演じた役のオーディションで最終選考まで残っていた。この年、アーサー・ゴールデンの小説を原作とする『SAYURI』で延を演じ、初めてハリウッド映画に出演する。作品は同年のアカデミー賞で3部門を受賞した。
『バベル』でブラッド・ピットと共演し、カンヌへ
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『バベル』で綿谷ヤスジロウを演じ、ブラッド・ピットと共演した。作品が出品されたカンヌ国際映画祭に参加し、イニャリトゥは監督賞を受ける。同じ年には『THE 有頂天ホテル』で主演している。
初監督、紫綬褒章、そして国内外の演技賞
平成21〜
初監督作『ガマの油』が公開
幼少期に出会ったガマの油売りの思い出をもとに、原案・共同脚本・監督・出演を務めた。1日に何億円も稼ぐデイトレーダーの父・拓郎を自ら演じ、妻を小林聡美、息子を瑛太が演じる。6月6日の初日舞台挨拶には、監督・主演として登壇した。
eiga.com×2
紫綬褒章を受章
主演映画『わが母の記』の初日舞台挨拶の日に受章が発表され、「こんなにめでたい日に、素晴らしい章をいただいて」と語った。同作は井上靖の自伝的小説が原作で、老いた母との距離を埋めようとする男を演じている。記憶を失っていく母親役は樹木希林。
『渇き。』でシッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀男優賞
中島哲也監督の『渇き。』で藤島昭和を演じ、第47回シッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀男優賞を受けた。この年は『蜩ノ記』にも戸田秋谷役で出演。
日曜劇場『陸王』に主演
池井戸潤の小説を原作とするTBSの連続ドラマで、老舗足袋業者「こはぜ屋」の四代目社長・宮沢紘一を演じた。裸足感覚を追求したランニングシューズ“陸王”の開発に打ち込む物語。息子の大地役は山崎賢人。
『三度目の殺人』で日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞
是枝裕和監督の法廷心理ドラマ『三度目の殺人』の演技で、第41回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を初めて受けた。徳川家康を演じた『関ヶ原』でも優秀助演男優賞に選ばれている。授賞式には、撮影中の新作の現場で起こした肉離れのため、足を引きずりながら登壇した。
『孤狼の血』で日本アカデミー賞とアジア・フィルム・アワードの主演男優賞
『孤狼の血』で演じた大上章吾で、第42回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受けた。3月17日に香港で開かれた第13回アジア・フィルム・アワードでも主演男優賞と特別賞を受け、英語と中国語でスピーチした。
本人50年、100年後に残る映画…そのなかに自分が1本でも参加できたら良い人生だなと思うんです。そういう思いは俳優を志したときからありましたね 出典
『すばらしき世界』でシカゴ国際映画祭のベストパフォーマンス賞
西川美和監督が佐木隆三の小説『身分帳』を原案にした『すばらしき世界』で、13年の刑期を終えて人生の再出発を目指す三上正夫を演じた。第56回シカゴ国際映画祭のベストパフォーマンス賞を受け、同映画祭の演技賞は19年ぶり2度目。役所によると、西川は彼が1991年に主演したドラマを17歳で観て心を動かされたという。
本人それでも演じるにあたっては、どうアプローチすればいいのか、相当悩みました。 出典
カンヌの男優賞と、師・仲代達矢との別れ
令和5〜
『PERFECT DAYS』でカンヌ国際映画祭の男優賞
ヴィム・ヴェンダース監督が東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』で平山を演じ、主演に加えて製作総指揮も務めた。第76回カンヌ国際映画祭で男優賞を受け、日本人の俳優部門での受賞は2004年の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる。『うなぎ』のパルム・ドールに続き、カンヌで受け取る2つ目のトロフィーだった。作品は第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にもノミネートされた。
本人この賞に恥じないように頑張りたいと思います 出典
2023年、同世代の人は
桑田 佳祐(音楽家・同じ1956年生まれ)デビュー45周年、10年ぶりの『茅ヶ崎ライブ2023』日曜劇場『VIVANT』でノゴーン・ベキを演じる
TBSの『VIVANT』で第1話と第5話から最終話に出演し、ノゴーン・ベキ(乃木卓)を演じた。この年は映画『銀河鉄道の父』で宮沢政次郎を演じて主演し、6月1日配信のNetflixシリーズ『THE DAYS』でも吉田昌郎役で主演している。
『PERFECT DAYS』で4度目の日本アカデミー賞最優秀主演男優賞
第47回日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞を受け、ヴェンダースも最優秀監督賞を受けた。同賞の最優秀主演男優賞は『Shall we ダンス?』『うなぎ』『孤狼の血』に続く4度目で、高倉健に並ぶ歴代最多タイとされる。10月公開の『八犬伝』では、失明しながらも28年の歳月をかけて『八犬伝』を書き上げた滝沢馬琴を演じて主演した。
アジア・フィルム・アワードで特別功労賞
香港で開かれた第18回アジア・フィルム・アワードで、アジアの映画界で長年功績を残した映画人に贈られる特別功労賞を受けた。日本人では2008年の山田洋次、2016年の樹木希林に続く3人目。同賞では『孤狼の血』と『PERFECT DAYS』で2度、主演男優賞を受けている。
本人これまでの受賞者の名前を聞き、そのそうそうたる顔ぶれに震えました。大変光栄に思います。 出典
師・仲代達矢が死去
無名塾の師、仲代達矢が肺炎のため92歳で死去した。役所は『文藝春秋』2026年1月号に追悼手記を寄せ、仲代との出会いや、無名塾入塾から始まる師弟関係を振り返っている。
本人縁もゆかりもない僕を無名塾で一人前の俳優に育ててくれたのですから、ただただ感謝の思いしかありません 出典
現在:Netflix『俺のこと、なんか言ってた?』に主演
8月28日公開の中島哲也監督『時には懺悔を』では大手探偵社のオーナー・寺西を演じ、西川美和監督の『わたしの知らない子どもたち』にも山井甚平役で出演した。宮藤官九郎が「承認欲求」をテーマに書いたオリジナル脚本のNetflixシリーズで、ロンドンの舞台で成功を収め、2年ぶりに帰国すると世間からも家族からも忘れられていた大物俳優・高瀬川玄を演じる。かつてのライバル俳優役は濵田雅功。10月22日から世界独占配信された。
本人今回、人生二度目の『俳優役』をいただきました。 出典