目次
宮城の少年、大人計画へ
昭和45〜
宮城県若柳町の文具店に生まれる
宮城県栗原郡若柳町(現・栗原市)で、文具店を営む家に生まれた。本名は俊一郎。朝日新聞主催の作文コンクールで2年連続の県予選入賞歴があり、『ビートたけしのオールナイトニッポン』のヘビーリスナーとして、番組で放送作家兼トークの相方を務めた高田文夫に憧れた。
日本大学芸術学部へ進学、小劇場にのめり込む
詰襟に下駄で通ったバンカラ校風の宮城県築館高校を卒業し、高田文夫の母校でもある日本大学芸術学部放送学科に進学。上京後は小劇場にはまり、授業にはろくに出なくなった。舞台の小道具係のバイト中、たばこを吸いに来た松尾スズキに「君はさ、何がしたいの?」と問われ、「別に……」と答えたのが最初の会話だった。
劇団「大人計画」に演出助手として所属
20歳で、松尾スズキが主宰する劇団「大人計画」に演出助手として正式に所属した。きっかけは公演チラシの裏にあった「文芸部募集」の文字で、書いてあった番号に電話をかけると松尾本人が出た。以後、松尾が倉庫にしていた下北沢のアパートで寝泊まりしながら常に3、4本の公演を抱え、劇団の外ではバラエティ番組や深夜ドラマの作家としても働き始めた。
本人松尾さんが出たんですよ。『別に……』って言っちゃったし気まずいなぁと思いながら、覚えてないだろと思って『文芸部って何をするんですか?』と聞くと、『台本を書いたり演出したりすんだよ。入りたいなら、何か書いて持ってきて』と言われて。それで初めて戯曲を書いたんです。 出典
大学を中退し、結婚
大学には4年まで籍を置いたが、1年の休学を経て松尾から「劇団員になる?」と誘われ、24歳で日本大学を中退した。同じ年に、交際していた振付師の八反田リコと結婚。「地に足をつけよう、社会人っぽくしようと必死だった」と、当時の焦りを後年振り返っている。
阿部サダヲらと「グループ魂」を結成
阿部サダヲ、村杉蝉之介と3人でグループ魂を結成。ギターを使ってシャウトする漫談スタイルのコントグループとして出発し、宮藤は“暴動”を名乗った。1997年からギター・ベース・ドラムを加えたバンド編成になる。
自身の公演「ウーマンリブ」を旗揚げ
大人計画の部分公演の作・演出を任されるようになり、自身の公演を「ウーマンリブ」と名づけて第1作『ナオミの夢』を上演。名前は仲間と考えた候補から「宮藤さんからいちばん遠い言葉」という理由で選んだ。企画・脚本・演出を手がけ役者としても出る、30年続くライフワークの始まりだった。
出世作と人気脚本家の日々
平成12〜
— 『池袋ウエストゲートパーク』が出世作に
石田衣良の小説を原作に、長瀬智也主演のTBS連続ドラマとして4月14日から放送。演出の堤幸彦が書き手を探し、プロデューサーの磯山晶から「試しに書いてみない?」と声がかかって1話を書いたところ、全話を任された。ミュージカル『キレイ』の公演中に書いたこの作品は関東地区で平均視聴率14.9%を記録し、第25回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞を受賞。高視聴率で出世作となり、以後テレビの脚本依頼が続く。磯山・長瀬との組み合わせは『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』『俺の家の話』へと続いた。
本人演出の堤幸彦さんが書き手を探していたみたいで、プロデューサーの磯山晶さんから僕にも『試しに書いてみない?』って声がかかったんですよ。それで1話だけ書いてみたら、気に入ってもらえたみたいで、全話書くことになったんです。 出典
映画『GO』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞
在日韓国人の高校生を主人公にした金城一紀原作、行定勲監督の映画『GO』の脚本を担当し、10月20日に公開。この脚本で第53回読売文学賞戯曲・シナリオ賞、キネマ旬報ベスト・テン脚本賞、ヨコハマ映画祭脚本賞、第25回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受け、テレビに続いて映画でも脚本家としての評価を得た。翌年度も『ピンポン』で第26回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受けている。29歳から大ヒットが続き、急に多くの人に評価されるようになった当時を、後年「見えない何かにビビって」いたと振り返った。
本人急にいろんな人から評価されて、自分じゃないもうひとりの自分に監視されているような、おかしな感覚がありました。それまでは演劇の舞台で、目の前にいるお客さんに向けて作品をつくってきたけれど、それがドラマや映画に広がって、見えない何かにビビって。世間にどう思われるだろう。面白くないと言われたらどうしよう…と。 出典
『木更津キャッツアイ』 ―― 実在の街の若者たちを描く
千葉・木更津を舞台に、昼は草野球チーム、夜は怪盗団として騒動を起こす高校の同級生5人組を描いたTBS連続ドラマで、1月18日から放送。第32回ザテレビジョンドラマアカデミー賞では脚本賞に加え、演出陣とともに監督賞も受け、平成14年度の芸術選奨新人賞(放送部門)もこの作品で受賞した。2003年と2006年には劇場版『日本シリーズ』『ワールドシリーズ』が作られている。同じ年、グループ魂はアルバム『Run魂Run』でメジャーデビューした。
『真夜中の弥次さん喜多さん』で映画監督デビュー
しりあがり寿の漫画を原作にした『真夜中の弥次さん喜多さん』で長編映画の監督デビュー。長瀬智也が弥次郎兵衛、中村七之助が喜多八を演じ、4月2日に公開された。この作品で新藤兼人賞金賞を受賞。前年にPARCO劇場で初演した戯曲『鈍獣』が第49回岸田國士戯曲賞を受け、劇作家としても評価を得た年でもある。
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『タイガー&ドラゴン』 ―― 落語をドラマに
長瀬智也と岡田准一の主演で、落語の演目と現代の物語を重ねるTBS連続ドラマを、1月のスペシャル版に続いて4月15日から放送。スペシャル版が第42回ギャラクシー賞テレビ部門選奨、連続ドラマが第43回の同賞大賞を受け、第45回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞も受賞した。年末には結成10年目のグループ魂が「君にジュースを買ってあげる♥」で第56回NHK紅白歌合戦に出場し、同じ年に第1子となる長女が誕生した。
映画『舞妓Haaaan!!!』の脚本
阿部サダヲの映画初主演作となったコメディ『舞妓Haaaan!!!』の脚本を担当し、6月16日に公開。堤真一・柴咲コウとの3人主演で興行収入20.8億円を記録し、第31回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受けた。この前後には『吾輩は主婦である』『流星の絆』など、テレビの連続ドラマも途切れず書いている。
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監督第2作『少年メリケンサック』、『うぬぼれ刑事』で向田邦子賞
2009年2月14日、レコード会社の新人発掘担当(宮崎あおい)が25年前に解散したパンクバンドを見つけ出す監督第2作『少年メリケンサック』が公開。同年5月には自身の戯曲『鈍獣』の映画版も公開され、歌舞伎『大江戸りびんぐでっど』では作・演出も担当した。2010年には長瀬智也主演のTBS連続ドラマ『うぬぼれ刑事』を書き、第66回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞と2010年度の第29回向田邦子賞を受けた。翌2011年、グループ魂は結成15周年ツアーのファイナルとして初の日本武道館公演を行っている。
『あまちゃん』、そして大河へ
平成25〜
— 連続テレビ小説『あまちゃん』が社会現象に
能年玲奈主演のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』を4月1日から9月28日まで執筆。岩手・北三陸の小さな田舎町を舞台に、海女を目指すヒロインが地元アイドルになる人情喜劇で、震災についても「入れないのはうそだとも思った」と語って劇中に組み込んだ。全期間平均視聴率は関東地区で20.6%。劇中の「じぇじぇじぇ」が2013年の新語・流行語大賞年間大賞に選ばれ、脚本は第78回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞と東京ドラマアウォード2013脚本賞を受けた。同年5月には監督第3作『中学生円山』(草彅剛主演)も公開している。
本人自分が10代のとき、家族と一緒に見たという“朝ドラ”の感じは今も昔も変わらないものだと思う。長い歴史のある朝の時間、どれだけ自分が違和感なく溶け込めるかが、自分の中で挑戦 出典
『ごめんね青春!』を執筆
TBS日曜劇場『ごめんね青春!』を執筆。日曜劇場の平均視聴率・最高視聴率でともに歴代最低を記録した一方、ギャラクシー賞テレビ部門の2014年12月度月間賞と第83回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞を受けた。2021年の脚本ドラマ人気ランキングでは『あまちゃん』を抑えて1位になっている。
『監獄のお姫さま』、初のネットドラマも
TBSの連続ドラマ『監獄のお姫さま』を執筆し、第95回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞を受賞。『ゆとりですがなにか』のスピンオフ『山岸ですがなにか』(Hulu)では初めてネットドラマの脚本を手がけた。翌2018年には劇団新感線に『メタルマクベス』再演版を提供し、『ロミオとジュリエット』の脚色・演出も担当。この頃からパンクバンド「画鋲」のギタリストも務めている。
— NHK大河ドラマ『いだてん』を執筆
NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』を1月6日から12月15日まで執筆。第1部で日本初のオリンピック選手・金栗四三を、第2部で田畑政治を主人公にした。平均視聴率は大河ドラマの歴代最低を記録したが、脚本は第12回伊丹十三賞を受け、作品も第44回エランドール賞プロデューサー賞、2019年12月度ギャラクシー賞月間賞、東京ドラマアウォード2020グランプリを受賞した。後年、残された資料から実在の人物の物語を考えるのが「すごく楽しかった」と振り返り、この経験が2028年の朝ドラの題材選びにつながっている。
新型コロナに感染し一時入院
腎盂炎の治療中に新型コロナウイルスへの感染が判明し、3月31日に公表。4月7日に退院し、5月11日にTBSラジオ『ACTION』にリモートで復帰した。同年はウーマンリブvol.14『もうがまんできない』の作・演出も務めた。
バンド「グループ魂」が解散
所属するバンド「グループ魂」が、公式YouTubeチャンネルの生配信で12月30日付での解散と2022年新春の再結成を発表した。
配信、映画、そして朝ドラ再び
令和4〜
— 『不適切にもほどがある!』が大きな話題に
阿部サダヲ主演のTBS金曜ドラマとして1月26日から3月29日まで放送。コンプライアンスの厳しい令和(2024年)と、そうではなかった昭和(1986年)を行き来するタイムスリップもので、令和の基準では不適切な表現への注釈テロップが毎話何度も入り、終盤にはミュージカルシーンが置かれた。第119回ザテレビジョンドラマアカデミー賞脚本賞、東京ドラマアウォード2024脚本賞を受け、続く『新宿野戦病院』とあわせて第33回橋田賞も受賞。2026年1月4日にはスペシャルドラマも放送された。
『新宿野戦病院』『終りに見た街』 ―― 初の医療ドラマ
小池栄子と仲野太賀の主演で歌舞伎町の救急医療を描くフジテレビ『新宿野戦病院』が7月3日から放送。初めての医療ドラマで、固有名詞を台詞に入れて視聴者の生活と地続きにする自身の流儀を語った。9月21日には山田太一原作をテレビ朝日開局65周年記念作としてリブートした『終りに見た街』も放送され、11月にはウーマンリブvol.16『主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本』を上演した。
本人昔から、なるべくウソの数を減らしたいというのがあって。実在の人の名前など固有名詞をセリフに入れたりするのは、僕らが普段している会話と同じような会話を劇中の人たちもしているのを見せたいというのがあります 出典
紫綬褒章を受章
11月2日付で政府が2025年秋の褒章受章者を発表し、学術・スポーツ・芸術文化などの分野で優れた業績を挙げた人に贈られる紫綬褒章に宮藤が選ばれた(3日発令)。時事通信は『GO』の日本アカデミー賞最優秀脚本賞と、社会現象となった『あまちゃん』を挙げて紹介した。この年は1月17日公開の映画『サンセット・サンライズ』(岸善幸監督、菅田将暉主演)で、都会から宮城県南三陸に移住した会社員と住民の交流を脚本に書き、舞台『雨の傍聴席、おんなは裸足…』の作・演出・出演も務めている。
映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の脚本
『アイデン&ティティ』の田口トモロヲ監督と再び組んだ青春音楽映画の脚本を担当し、3月27日に公開。写真家・地引雄一の自伝的エッセイを原作に、日本で初めてパンクロックを自分たちの手で生み出した「東京ロッカーズ」の若者たちを、峯田和伸と若葉竜也の主演で描いた。
2028年春の朝ドラ『ほんのモキチ』の脚本に決定
6月4日、NHKが2028年春に始まる連続テレビ小説『ほんのモキチ』の脚本を宮藤が手がけると発表した。歌人・斎藤茂吉と妻・輝子をモデルにした夫婦の物語で、ヒロインは河合優実、舞台は山形県。『あまちゃん』以来15年ぶりの朝ドラで、会見では、放送が月曜から土曜だった当時と金曜までになった今との違いが「結構大きい」と語り、実在の人物でコメディーと夫婦の話をやりたかったと企画の意図を明かした。
本人女性が活躍する時代なので、自由に言いたいことを言う女性のキャラクターがいいなと。そのなかで、あくまでコメディーがやりたい、夫婦の話がやりたいという思いがありました 出典
Netflix『俺のこと、なんか言ってた?』の脚本
役所広司主演、磯山晶の企画・プロデュースによるNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』の脚本を担当。ロンドンの舞台で『リア王』の主役を務めた大物俳優が栄光の瞬間からゼロになり、再び這い上がろうとする“承認欲求”の塊の男の物語で、10月22日に世界独占配信が始まった。俳優としてはこの年、中島哲也監督『時には懺悔を』(8月28日公開)に明野哲夫役で、是枝裕和監督『ルックバック』(9月11日公開)に小学校の先生・玉井役で出演した。
現在 ―― 映画・配信・朝ドラへ、書き続ける
映画の脚本と俳優としての出演、Netflix作品の執筆に加え、2028年春放送予定の朝ドラ『ほんのモキチ』の準備が進む。脚本づくりを長距離走、コントを短距離走にたとえ、かねて「どちらもバランスよく続けたい」と語ってきたとおり、大人計画のウーマンリブも並行して続けている。