目次
祖父の将棋盤から奨励会へ
平成4〜
9歳の誕生日に、祖父から将棋盤と駒をもらう
同居していた祖父から誕生日に将棋の盤と駒をもらったのが始まり。書道や水泳、公文などの習い事は人並みにできなかったが、将棋は初めて人並みにできることで、「これはやらなければいけない」と受け止めたという。磯子将棋センターをホームグラウンドに「年間300回くらい通った」と話し、1年でアマチュア初段前後、もう1年で三段ほどになった。
小学6年生で奨励会に入る
3月には小学生将棋名人戦の東日本大会に神奈川県代表として出場した。9月に奨励会へ入会し、同期には菅井竜也・斎藤慎太郎・佐々木勇気らがいる。研修会には祖母が付き添っていたが、入会と同時に一人で将棋会館へ通うようになった。電車で1時間以上かかり、「けっこう、つらかったですね」と振り返る。
三段リーグに入り、高校は入学してすぐに中退する
奨励会三段リーグに第43回(2008年度前期)から参加した。初の三段リーグと高校進学が重なり、高校は入学してすぐ「自分には合わない、自分が行く場所ではない」と判断して中退している。
17歳の四段と、鈴木大介の叱咤
平成21〜
17歳で四段に昇段し、プロ棋士になる
三段リーグ3期目の第45回で14勝4敗の1位となり、10月1日付で四段に昇段した。師匠は安恵照剛八段。17歳0か月でのプロ入りは、1987年に現行の三段リーグ制度ができて以降、渡辺明・屋敷伸之・豊島将之に次ぐ4番目(当時)の年少記録だった。
新人王戦でアマチュアに敗れ、鈴木大介に叱咤される
新人王戦でアマチュアの選手に敗れた。その数か月後、蒲田将棋クラブで研究会をしていた先輩たちとの打ち上げの席で、鈴木大介から辛辣な言葉をかけられる。言われたのは「自分なら絶対にアマチュアに負けない」ということで、本人は「プロ棋士なら、負けないぐらいの実力を持って、負けないぐらいの準備をして」臨めという意味だと受け取った。この出来事を本人は「分岐点になりました」と語っている。鈴木とはその後も交流が深い。
本人自分にとってとても大きな出来事で、ありがたかったです。あれがなかったらどうなっていたか、全然わかりません。 出典
公式戦18連勝を記録し、連勝賞を受ける
1月11日の順位戦から6月1日の加古川青流戦まで公式戦で18連勝し、この年度の将棋大賞で連勝賞を受けた。6月10日には竜王戦6組で優勝。NHK杯では佐藤康光との2度の千日手の末に勝った。将棋を教えてくれた祖父は亡くなる直前、その瞬間を病院のテレビで見て「よかった」と言っていたという。
加古川青流戦と新人王戦で優勝する
4月に竜王戦ランキング戦の連続昇級で五段に上がる。10月27・28日の第2期加古川青流戦の決勝三番勝負で伊藤真吾を破って優勝し、同月31日には第34期新人王戦の決勝三番勝負で藤森哲也を2勝1敗で下した。11月には初の単著『永瀬流 負けない将棋』を出した。この年度の将棋大賞では新人賞と勝率1位賞(0.786)を受けている。
電王戦FINALでソフトのSeleneに勝つ
将棋電王戦FINALの第2局で、コンピュータ将棋ソフトのSeleneと高知城で対局した。角を成らずに王手をかけるとSeleneが王手を放置し、反則負けになった。事前にソフトを借りて練習し、この不成りへの動作を知っていたという。団体戦となった電王戦で、プロ棋士側が2勝目を挙げたのは初めてだった。
棋聖戦で羽生善治に挑む、初めてのタイトル戦へ
第87期棋聖戦の本戦決勝で村山慈明を破り、羽生善治棋聖への挑戦権を得た。将棋への厳しい姿勢から「軍曹」と呼ばれ、この6月には「階級を上げられるように頑張ります(笑)」とコメントしている。6月に開幕した五番勝負の第4局では額に冷却シートを貼って対局し、解説会では一日の対局にスポーツドリンクを約20本用意するという話が紹介された。五番勝負は8月1日の第5局までもつれ、2勝3敗で敗れる。
竜王戦1組に昇級し、七段になる
竜王戦2組昇級者決定戦の決勝で杉本昌隆を破って1組へ昇級し、同日付で七段に昇段した。この年から、14歳2か月でプロになった藤井聡太とVS(1対1の練習将棋)を始め、藤井が最も多く将棋を指した相手になっていく。
棋王戦で渡辺明に挑み、2勝3敗
子どもの頃に一度も勝てなかったという同世代の黒沢怜生を挑戦者決定二番勝負で破り、渡辺明棋王に挑んだ。五番勝負は3月30日の第5局までもつれて2勝3敗。対局中のおやつにバナナを第4局までで計23.5本注文し、ネット上で「バナ永瀬」と呼ばれた。
初タイトルから王座4連覇、そして失冠
令和元〜
高見泰地から叡王を4連勝で奪い、初タイトル
2018年度の第4期叡王戦は、挑戦者決定三番勝負で菅井竜也を破り、同世代の高見泰地叡王に挑んだ。4月6日に台北の圓山大飯店で開幕した七番勝負は初めての海外対局で、このためにパスポートを取った。第1局を逆転で制し、5月に広島・宮島で4連勝として、3度目のタイトル挑戦で初めてタイトルを手にした。
本人初タイトルで、ひとつ結果が出せてうれしいと思いました。 出典
斎藤慎太郎から王座を奪い、二冠と八段に
第67期王座戦の挑戦者決定戦で豊島将之を破り、斎藤慎太郎王座に挑戦した。五番勝負は2連勝で迎えた10月1日、ホテルオークラ神戸での第3局を161手で制し、3連勝で王座を奪う。5月の叡王に続く二冠となり、八段に昇段した。この頃から渡辺明・豊島将之と並ぶ「三強」、藤井聡太を含めて「四強」と呼ばれ始め、2020年6月に藤井が棋聖を獲得して4人で八つのタイトルを占めると、「四強」の一角としての立場が定着した。
叡王戦9局の末に豊島将之に敗れ、叡王を失う
8月には藤井聡太・増田康宏と組んだ「チーム永瀬」で、非公式戦の第3回AbemaTVトーナメントに優勝した。叡王の初防衛戦となった七番勝負は、挑戦者の豊島将之との間に千日手1回と持将棋2回が挟まる異例の長期戦になる。9月21日の第9局で敗れ、3勝4敗2持将棋で叡王を失った。この番勝負の合計1418手は、番勝負の合計手数で史上最多の記録である。
王座を初防衛し、九段に
第68期王座戦五番勝負で久保利明の挑戦を3勝2敗で退け、初めてタイトルを防衛した。「タイトル3期獲得」の規定で九段に昇段。和服は「どう着ても胸がはだけ気味になるのが気になる」として、第1局は対局の途中でスーツに着替え、第2局からは初めからスーツで臨んだ。
王将戦で渡辺明に挑み、A級に昇級
1月10日に静岡県掛川市で開幕した第70期王将戦七番勝負で渡辺明王将に挑み、主催者を通じて渡辺と開催地の承諾を受けた上で、第1局からスーツで対局した。3月11日、順位戦B級1組で近藤誠也に勝ち、トップ棋士10人が名人への挑戦権を争うA級へ初めて昇級する。王将戦は3連敗の後にカド番から2連勝したが、第6局で敗れて2勝4敗だった。
本人A級は最高峰の舞台で目標にしていた。(昇級という)結果になって良かった 出典
木村一基を退け、王座3連覇
王座戦は第1局を落としてから3連勝し、第4局で木村一基に122手で勝って防衛。終局後は「とても難しい将棋が多く、苦しい展開が多かった」と話した。竜王戦では1組ランキング戦で初優勝したが、挑戦者決定三番勝負で藤井聡太に0勝2敗で敗れた。
棋聖戦の挑戦者になり、初めて藤井聡太に挑む
4月25日の挑戦者決定戦で渡辺明に勝ち、初めて藤井聡太への挑戦権を得た。五番勝負の第1局は2度の千日手が成立し、タイトル戦で史上初めて1日に3局を指して勝ったが、第2局から3連敗して1勝3敗で敗れた。
王座を4連覇し、就位式で名誉王座への決意を語る
8〜10月の第70期王座戦五番勝負で、挑戦者の豊島将之に第1局を落としてから3勝1敗とし、4連覇を果たした。12月16日の就位式では、藤井・渡辺・豊島との番勝負でこれまで勝ったことがなく、ここで結果を残したかったと述べる。花束は、本人が大ファンだという漫画の作者、宮崎周平が贈った。
本人来期は名誉王座をかけたタイトル戦になります。全身全霊でがんばります 出典
藤井聡太に王座を奪われ、無冠になる
5期連続の獲得で得られる名誉王座がかかった第71期王座戦で、七冠の藤井聡太を迎えた。対局規定で和服が原則となり、3年ぶりに和服でタイトル戦に臨む。第1局を制したが、京都での第4局は終盤に藤井玉をあと一歩まで追い詰めながら、123手目の▲5三馬で逆転された。1勝3敗で失冠して4年5か月ぶりに無冠となり、藤井は史上初の八冠独占を果たした。第4局は将棋大賞の名局賞特別賞に選ばれている。
朝日杯初優勝と、藤井聡太への挑戦
令和6〜
朝日杯で藤井聡太を破り、初優勝
王座を失った後は「魂が抜けた状態に」なり、初冬からは公式戦で5連敗した。第17回朝日杯将棋オープン戦では、王座戦と同じ顔合わせになった藤井聡太竜王・名人に129手で勝ち、初優勝を飾る。
本人努力が報われてよかった 出典
羽生善治を破り、王座戦で再び藤井聡太に挑む
第72期王座戦の挑戦者決定戦で羽生善治に114手で勝ち、藤井聡太王座への挑戦権を得た。前年とは立場を入れ替えた五番勝負は0勝3敗で、タイトル戦で初めてのストレート負けになった。同じ年度の第74期王将戦でも、挑戦者決定リーグのプレーオフで西田拓也に勝って藤井に挑んだが、七番勝負は1勝4敗だった。
本人最近は挑戦者決定戦でかなり多く負けてしまっていたので、ここで一つ結果を出すことができてよかった。それが王座戦というのは運命を感じます 出典
プレーオフを制し、名人戦に初登場
順位戦A級で6勝3敗となり、同じ成績の佐藤天彦とのプレーオフに勝って藤井聡太名人への挑戦者になった。七番勝負は3連敗の後、5月17・18日に宇佐神宮で指された第4局で、千日手の指し直し局を敗勢から粘って名人戦初勝利を挙げる。シリーズは1勝4敗で敗れた。
本人藤井さんと9時間の持ち時間で指せる機会ができたのは、自分にとってプラス 出典
佐々木勇気を破り、王位戦でも藤井聡太に挑む
王位戦の挑戦者決定リーグ白組を5戦全勝で抜け、名人戦第4局の4日後、挑戦者決定戦で奨励会時代から親交の深い佐々木勇気に勝って藤井聡太王位への挑戦権を得た。七番勝負は2勝4敗で敗れたが、第4局と第5局の連勝は、藤井にとって七番勝負で初めての連敗だった。
王将戦で藤井聡太を初めてカド番に追い込み、3勝4敗
2期連続で挑戦権を得た第75期王将戦七番勝負は、第4局を終えて3勝1敗とし、藤井聡太王将を七番勝負で初めてカド番に追い込む。そこから、3月25日に関西将棋会館で始まった第7局まで3連敗し、3勝4敗。同じ年度の順位戦A級は7勝2敗で糸谷哲郎と並んだが、プレーオフで敗れて2年連続の名人挑戦はならなかった。4月公表の2025年度将棋大賞で、敢闘賞・最多対局賞(71局)・最多勝利賞(46勝)を受けた。
本人藤井さんが(タイトルホルダーとして)待っているので、私が(挑戦者として)そこに行くのが自然かなと。タイトル戦で指したいんですよね 出典
竜王戦の準決勝で柵木幹太に敗れる
6月11日に開幕した第85期順位戦A級は、近藤誠也に勝って白星で始める。第39期竜王戦の決勝トーナメント準決勝で、5組優勝から勝ち上がってきた柵木幹太に敗れ、挑戦者決定三番勝負に進めなかった。
JT杯の決勝へ進み、王将戦リーグは首位タイ
将棋日本シリーズJT杯では10月31日の準決勝で八代弥に勝ち、決勝進出を決めた。決勝は11月29日、佐々木勇気と戦う。第76期王将戦の挑戦者決定リーグでは3勝1敗で首位タイにつけ、2016年度から続くタイトル戦出場を11年連続に伸ばせるかがかかる。