目次
プレトリアの少年と北米への移住
昭和46〜
南アフリカ・プレトリアに生まれる
父エロルは電気機械技術者、母メイはモデルで栄養士。弟キンバル、妹トスカがいる。1979年に両親が離婚すると、9歳ごろのマスクは百科事典とコンピューターがあるからと父のもとを選んだ。のちにこの選択を悔やみ、父とは疎遠になる。
自作ゲーム「Blastar」を雑誌に売る
10歳でコンピューターとビデオゲームに興味を持ち、パソコン「VIC-20」の取扱説明書を頼りにプログラミングを独学。12歳で作ったBASICのゲーム「Blastar」を、雑誌『PC and Office Technology』に約500ドルで売った。
南アフリカを離れ、カナダへ渡る
南アフリカの兵役を避けるためとされ、カナダ生まれの母を通じてカナダのパスポートを申請し、手続きを待つ間はプレトリア大学に5か月通った。1989年6月にカナダに着き、農場や製材所で働く。1990年にクイーンズ大学へ入り、2年後にペンシルベニア大学へ移って物理学と経済学を学んだ(学位の授与は1997年)。
本人アメリカは、すごいことを可能にする国だ 出典
ネット起業の成功を宇宙と電気自動車へ
平成7〜
弟と「Zip2」を創業
スタンフォード大学の大学院(材料科学)に合格しながら入学せず、1990年代のインターネットの波に加わる。弟キンバル、グレッグ・コウリと興した会社は、新聞社向けに地図や道案内、電話帳をそろえたネットの街案内を作った。ニューヨーク・タイムズやシカゴ・トリビューンとの契約も得ている。
本人The website was up during the day and I was coding it at night, seven days a week, all the time.(訳: 昼間はウェブサイトを動かし、夜にコードを書いていた。週7日、ずっとだ。) 出典
Zip2をコンパックに売却
コンパックが現金3億700万ドルでZip2を買収し、7%の持ち分を持つマスクは2200万ドルを受け取った。在任中、CEOになろうとする試みは取締役会に阻まれている。投資家に見せるため、普通のコンピューターに大きなプラスチックの箱をかぶせ、小型のスーパーコンピューターで動いているように見せたという逸話も残る。
オンライン銀行「X.com」を共同設立
約1200万ドルを投じ、ハリス・フリッカーらと共同で設立。連邦の預金保険が付いた最初期のオンライン銀行の一つで、開業から数か月で20万人以上が加入した。ただ投資家はマスクを経験不足とみなし、年末までにCEOをインテュイットのCEOだったビル・ハリスに替えた。
en.wikipedia.org×2
コンフィニティと合併、9月にCEOを解かれる
競争を避けるため、マックス・レヴチンとピーター・ティールが創業したコンフィニティと合併する。同社の送金サービス「PayPal」は、X.comのサービスより人気があった。合併後の会社でマスクはCEOに戻り、この年、クイーンズ大学で出会ったジャスティン・ウィルソンと結婚。だが9月、新婚旅行でオーストラリアにいる間に、取締役会はCEOをティールに交代させた。技術的な問題が重なり、事業モデルもまとまらなかったことが理由とされる。
宇宙開発企業「SpaceX」を設立
前年から非営利団体マーズ・ソサエティに関わり、植物を育てる装置を火星に置く計画を練っていた。打ち上げの手段を求め、ロシアの企業から大陸間弾道ミサイルを買おうとモスクワを2度訪ねたが果たせず、安価なロケットを造る会社を自ら起こすことにする。初期の資産のうち1億ドルを投じ、CEO兼チーフエンジニアに就いた。
PayPalがeBayに売却される
eBayが15億ドル相当の株式でPayPalを買収。株式の11.72%を持つ筆頭株主だったマスクは、1億7580万ドルを受け取った。この年にアメリカの市民権を得ている。私生活では同じ年、ジャスティンとの間に生まれた長男ネバダを、乳幼児突然死症候群で亡くした。
電気自動車のテスラに出資し、会長に
テスラは2003年7月にマーティン・エバーハードとマーク・ターペニングが設立した会社。マスクはシリーズAの資金調達を主導して635万ドルを出資し、筆頭株主として取締役会長に就く。電動スポーツカー「ロードスター」の設計を監督したが、日々の経営には深く関わらなかった。
ファルコン1、4度目の打ち上げで軌道へ
2006年に始まったファルコン1の打ち上げは3回続けて失敗し、マスクは破産寸前に追い込まれた。9月28日、4度目の打ち上げで、民間が開発した液体燃料ロケットとして初めて地球周回軌道に到達する。同じ年のうちに、ドラゴン宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)への飛行を担う16億ドルのNASAの契約を獲得。2012年には、そのドラゴンが民間の宇宙船として初めてISSにドッキングした。
本人The first three launches failed. Fortunately the fourth launch which was – that was the last money that we had for Falcon 1 – the fourth launch worked, or that would have been it for SpaceX.(訳: 最初の3回の打ち上げは失敗した。幸い、4回目は――ファルコン1に使える最後の資金だったが――成功した。そうでなければ、SpaceXはそこで終わっていただろう。) 出典
テスラのCEOに就任
2007年から対立が深まっていたエバーハードは、2008年の金融危機のなかで会社を追われた。10月、マスクはCEOに就き、従業員の25%を解雇する。この年に納車が始まったロードスターは約2500台が売れ、リチウムイオン電池を使った初の量産型電気自動車だった。
ロケットの再使用、そして世界一の富豪に
平成22〜
英国の俳優タルラ・ライリーと結婚
最初の妻ジャスティンとは2004年に双子、2006年に三つ子をもうけ、2008年に離婚。同じ年から交際していたライリーとは、スコットランドのドーノック大聖堂で式を挙げた。2012年に離婚し、翌年に再びライリーと結婚したが、2016年に2度目の離婚をしている。
セダン「モデルS」の生産第1号を披露
6月22日、フリーモントで、生産第1号の4ドアセダン「モデルS」を従業員や顧客、報道陣に披露する。この年、フォーブスの世界長者番付に資産20億ドルで初めて名を連ねた。2014年9月には来日し、日本でのモデルSの納車記念式典に出席。前日には新宿・歌舞伎町のラーメン店を訪れている。
ファルコン9の第1段が着陸に成功
12月21日(現地時間)、打ち上げを終えたファルコン9の第1段が地上の着陸場に戻り、垂直に着地した。軌道ロケットの第1段が帰還と着陸に成功したのは初めて。同じ月には、非営利のAI研究組織OpenAIを共同設立している。2017年には軌道ロケットの第1段を初めて再飛行させ、2026年5月時点でファルコンの第1段は650回近い着陸と再飛行を重ね、ファルコン9の打ち上げは週3回ほどのペースになった。
脳とAIをつなぐNeuralinkを共同設立
1億ドルを投じて、脳に埋め込む装置で人の脳とAIをつなぐことを目指すNeuralinkを共同設立。同じ年、いとこのリンドンとピーター・ライブが2006年に興し、マスクが構想と資金を出した太陽光発電のSolarCityを、テスラが20億ドルで買収した。2017年にはトンネルを掘るボーリング・カンパニーを設立し、7月には大衆向けセダン「モデル3」の限定生産が始まる。発売時点で予約は50万件を超えていた。
SECと和解し、テスラの会長を退く
テスラ株の非公開化について資金は確保済みだとする投稿を巡り、米証券取引委員会(SEC)に提訴された。2日後、主張を認めも否定もせずに和解。マスクとテスラがそれぞれ2000万ドルを払い、マスクは3年間会長を退いたが、CEOには留まった。
衛星通信網スターリンクの本格展開が始まる
低軌道の衛星で地上にインターネットを届けるスターリンクは、2015年に開発が始まった。2018年の試作機に続き、2019年5月、衛星60基を一度に打ち上げる最初の大規模な展開を行う。2025年5月時点で運用中の衛星は7600基を超え、稼働中の地球周回衛星の65%を占めた。
グライムスとの間に第1子が誕生
2018年から交際を公にしていたカナダの音楽家グライムスとの間に、第1子が誕生した。当初の名「X Æ A-12」(マスクによれば読みは「エックス・アッシュ・エー・トゥエルブ」)はカリフォルニア州の規則に合わず、出生証明書には名を「X」、ミドルネームを「Æ A-Xii」として登録。グライムスとの子は2022年までに3人で、マスクの子は少なくとも14人いる。
クルードラゴンで民間初の有人軌道飛行
5月30日、宇宙船クルードラゴン(愛称エンデバー)がファルコン9で打ち上げられ、NASAのダグ・ハーリー、ボブ・ベンケン両飛行士を国際宇宙ステーションへ運ぶ。2011年のスペースシャトル最終飛行以来、アメリカから打ち上げた初めての有人軌道飛行で、民間企業が運用した有人軌道飛行としても初めてだった。この飛行で有人運用の検証を終え、宇宙船は有人飛行の認証を受けた。
世界一の富豪に、タイム誌のパーソン・オブ・ザ・イヤーにも
1月7日、資産2850億ドルでアマゾン創業者ジェフ・ベゾスを抜き、世界一の富豪になった(2月16日にいったん首位を譲る)。5月にはテレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』の司会を務め、自身がアスペルガー症候群であると明かす。10月にテスラの時価総額が1兆ドルに達し、11月には資産が史上初めて3000億ドルを超えた。この年のタイム誌「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。
本人SNLの司会を務める、アスペルガー(症候群)の最初の人物として今夜、歴史をつくっている 出典
Twitter買収から政権入りを経て、SpaceX上場へ
令和4〜
Twitterを約440億ドルで買収
この年のロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナにスターリンクのサービスを無償で提供している。Twitterの株式の9.2%を握って筆頭株主となり、4月末に約440億ドルでの買収に合意する。いったん撤回に動いたのち、10月27日に買収を完了。直後にパラグ・アグラワルCEOら幹部を解任して自らCEOに就き、従業員の半数を解雇した。2023年5月にCEOを退いて会長兼CTOに移り、7月にはサービス名をXに改める。ドメインには、2017年にPayPalから買い戻していたx.comを使った。
本人TwitterのCEOを引き受けるほど愚かな人を見つけたらすぐにCEOを退任する。その後は、ソフトウェアとサーバーのチームの運営に専念する 出典
AI企業「xAI」を立ち上げる
OpenAIのChatGPTに対抗する生成AIの開発を掲げ、SpaceXとテスラの投資家から資金を集め、GoogleやOpenAIから技術者を迎えた。2015年に自ら共同設立したOpenAIの取締役は、2018年に退いている。11月には対話AI「Grok」を公開し、Xにも組み込んだ。
トランプ政権で政府効率化省(DOGE)を率いる
2024年7月、大統領選の候補だったトランプが演説中に銃撃された数分後に支持を表明し、選挙では2億9100万ドルを投じて最大の個人献金者になった。2025年1月の政権発足とともに特別政府職員となり、大統領上級顧問として、連邦予算の削減を掲げるDOGEを事実上率いる。連邦職員の大量解雇への関与などは強い反発を招き、特別政府職員の130日の任期が切れる5月末を前に、5月28日に退任を発表し、5月30日に政権を離れた。
本人I fully endorse President Trump and hope for his rapid recovery.(訳: トランプ大統領を全面的に支持し、一日も早い回復を願っている。) 出典
トランプ大統領と対立し、9月に和解
政権を離れた後、トランプ政権の大型法案を財政赤字を増やす内容だとして批判した。6月5日にはXでトランプを批判する投稿をし、対立が表面化する。6月11日、投稿は行き過ぎだったと認めて謝罪したが、7月には新党アメリカ党(America Party)の結成を表明し、8月に計画を見直したと報じられた。9月21日、右派のインフルエンサー、チャーリー・カークの追悼式で、2人は言葉と握手を交わしている。
テスラが1兆ドル規模の報酬案を承認
時価総額8兆5000億ドルの達成などの条件を満たせば10年かけて受け取る、1兆ドル規模の報酬案をテスラが承認した。2018年の報酬(約550億ドル)は2024年1月にデラウェア州の判事が取り消しを命じていた。この年の12月、デラウェア州最高裁判所がこれを復活させ、マスクの資産は史上初めて7000億ドルに達した。
SpaceXが上場し、史上初めて資産1兆ドルを超える
2月、SpaceXはマスクのAI企業xAIを買収した。スマートフォンと衛星を直接つなぐサービスを「Starlink Mobile」と改名し、第2世代衛星で全世界をカバーする計画を示した(商用開始は2027年半ば予定)。統合会社はxAIを1250億ドル、SpaceXを1兆ドルと評価され、非上場企業として史上最高の評価額となる。6月12日、ナスダックに銘柄コードSPCXで上場。評価額1兆7700億ドルは史上最大の新規株式公開で、860億ドルを調達し、初日の時価総額は約2兆1000億ドルに達した。株式の42%を持つマスクは、資産が1兆ドルを超えた史上ただ一人の人物になった。上場後にSpaceX株が急落し、資産は7月1日に1兆ドルを割り込んだ。7月下旬までに失った資産は約7500億ドルで、7月24日にはXに「(Former) Trillionaire」(元・兆万長者)と投稿する。
現在:スターシップが軌道に達し、浮き上がるロードスターを披露
9月28日、大型ロケットのスターシップが14回目の試験飛行で初めて軌道に達した。10月2日にはSpaceXとテスラの株高で資産が1日で610億ドル増え、再び1兆ドルに迫る。10月15日、テスラはSpaceXのロケット試験場で新型ロードスターを披露し、車体が短時間浮き上がる実演を見せた。生産開始は2028年としている。
本人It's not out of the question that at some point, Starlink will deliver a majority of the world's internet, at least in countries where we're allowed to operate, which is the vast majority of countries.(訳: いずれスターリンクが世界のインターネットの大半を担う日が来ても不思議ではない。少なくとも、事業を許されている国々、つまり大多数の国々では。) 出典