目次
府中町の附属校から東大の化学科へ
昭和25〜
広島大学附属高校を卒業
附属の小・中・高で12年間を共にした同学年に、のちの広島東洋カープオーナー・松田元がいる。卒業後は東京大学理学部に進む。
向山研で博士、ノースカロライナを経て理科大に
昭和54〜
向山光昭のもとで理学博士に
東京大学大学院理学研究科の博士課程を修了し、理学博士となる。指導教官は向山光昭。同じ年、向山らとの連名で、アルデヒドに対する不斉付加反応の論文を発表している。4月からは日本学術振興会の奨励研究員として東京大学理学部で研究を続けた。
ノースカロライナ大学の博士研究員として渡米
チャペルヒル校のアーネスト・イライエルのもとで博士研究員となり、1981年まで米国で研究する。
東京理科大学の講師となり、研究室を構える
帰国し、東京理科大学理学部第一部の講師に着任。ここで自身の研究グループを立ち上げた。以後、講師から助教授、教授と進み、この大学で研究を続けることになる。
東京理科大学の助教授に
講師として5年を過ごした理学部第一部で、助教授に昇任する。この年、フランスのアンリ・カガンが、触媒の左右の偏りよりも、できた分子の偏りのほうが大きくなる現象を報告し、多くの化学者がこれを追い始めていた。硤合もその一人で、ある反応の触媒とできた分子の形がよく似ていることに気づき、できた分子自身が触媒になる反応を作れないかと考えた。
硤合反応の発見と、生命の偏りの謎へ
平成7〜
英科学誌『Nature』に不斉自己触媒反応を発表
できた分子そのものが触媒となり、自分と同じ形の分子を増やしていく「不斉自己触媒反応」を発表した。左右の形のうち片方がわずか2%多いだけの状態から始めると、反応後には差が87%まで広がった。こうした反応は1953年に物理学者チャールズ・フランクが数式だけで示していたもので、実験で実現するまでに40年以上かかった。この論文は、『Nature』が1950〜2000年に載せた化学の厳選論文35報の一つに選ばれている。
米国化学会誌に続く論文を発表
前年の『Nature』に続き、自己触媒反応と大きな不斉増幅についての論文を『Journal of the American Chemical Society』に発表した。
天然の水晶を引き金に、片方の形を増やす
天然の水晶には右水晶と左水晶がある。そのそばでこの反応を行うと、水晶の向きに対応した形の分子が大きく偏って増えることを初めて示し、米国化学会誌に発表した。生命の偏りのきっかけとして唱えられてきた説と、片方に偏った分子とを実験で結びつけた成果だった。翌2000年には井上学術賞と日本化学会学術賞を受けている。
左右の差がほぼ無い状態から、片方の形だけを生み出す
1995年の発表から8年。片方が約0.00005%多いだけの状態から反応を3回くり返すと、分子は約63万倍に増え、差は99.5%以上に広がった。さらに左右の偏りを一切持ち込まずに反応させても、最初の偶然の揺らぎが増幅されて片方の形が勝つことを示した。どちらが勝つかは偶然で決まる。
キラリティーメダルを受け、光を引き金にする実験も
右と左の円偏光(光の一種)を当てて反応を始めると、光の向きに対応した形の分子が大きく偏って増えることを米国化学会誌に発表した。この年、九州大学先導物質化学研究所の客員教授も務めた。
キラルマテリアル研究センターのセンター長に
東京理科大学の総合研究機構に置かれた、私立大学学術高度化推進事業による「キラルマテリアル研究センター」のセンター長に就く。同じ年、文部科学大臣表彰の科学技術賞(研究部門)を受けた。
英国王立化学会の『Chemical Science』でインタビューを受ける
3月31日付の誌面に掲載された。この誌のインタビューに日本人の科学者が登場したのは初めてだった。
炭素の同位体による左右の差でも反応が偏ることを『Science』に
炭素の同位体を入れ替えただけで左右の区別が生まれた分子を引き金にしても、それに対応した形の分子が大きく偏って増えることを示した。
ノーベル化学賞まで
平成24〜
東京理科大学を退職し、東レ科学技術賞を受ける
3月に退職し、4月から理学部第一部の嘱託教授として残る。この年度には東レ科学技術賞を受け、そのとき中高生向けの研究解説を自ら書いた。右手と左手で握手すると形が合わないことにたとえ、体のタンパク質に逆の形のアミノ酸が混ざると働けなくなると説明している。ほかの研究者が題名に「Soai Reaction」を入れた論文は、この時点で40報以上あった。
本人それは、左手型の分子が、自分と同じ左手型分子を作る触媒として働く反応です。左手型分子があたかも生命のように自己増殖するものです。 出典
総説が『Symmetry』の2021年のベスト論文賞に
2019年に学術誌『Symmetry』に出した、不斉自己触媒反応とホモキラリティーに関する総説が選ばれた。受賞した総説2本のうちの1本。
ノーベル化学賞に決まる
スウェーデン王立科学アカデミーが、パリ・サクレー大学のアンリ・カガン名誉教授との共同受賞を発表した。授賞理由は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒反応の発見」。発表は、二人のおかげで、片方の形だけがそろう状態がどのように生まれうるのかが分かったとしている。発表によれば、カガンは1986年、右手型・左手型のうち片方の形をそれまで可能と考えられていた以上に偏らせて作る方法を見つけた。硤合は1995年に片方の形だけを生み出しうる初めての反応を発表した。知らせの電話には「人生で最も興奮する日」と答えた。同日、神楽坂キャンパスで会見を開いた。日本人の化学賞受賞は2年連続10人目で、広島県出身者として初の受賞者になる見込みと報じられた。
本人アンリ・カガン先生と一緒に受賞できるということがとても嬉しい 出典
東京理科大学の栄誉教授に
10月、東京理科大学の栄誉教授となる。会見では日本の有機合成化学の研究土壌に触れたうえで、研究の続きを語った。直近の論文は2024年に出た不斉自己触媒に関するもの。
本人完全にまだ解明したわけじゃなくて、まだまだ分からない。面白いことがあるはず。 出典