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そあい けんそう

硤合 憲三

広島県府中町に生まれた有機化学者は、片方の鏡像だけが自らを増やす「硤合反応」でノーベル化学賞を受けた。

昭和25年生まれ ・ 広島県安芸郡府中町出身 ・ 1950– ・ 満76歳

所属東京理科大学 栄誉教授・名誉教授 / 学歴東京大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士) / 専門有機化学(不斉合成・不斉自己触媒反応) / 指導教官向山光昭

近況
2026(令和8)満76歳

東京理科大学の栄誉教授に

10月、東京理科大学の栄誉教授となる。会見では日本の有機合成化学の研究土壌に触れたうえで、研究の続きを語った。直近の論文は2024年に出た不斉自己触媒に関するもの。

1950(昭和25) 広島県安芸郡府中町に生まれる1963(昭和38) 広島大学附属小学校を卒業1969(昭和44) 広島大学附属高校を卒業1974(昭和49) 東京大学理学部化学科を卒業1976(昭和51) 東京大学大学院の修士課程を修了1979(昭和54) 向山光昭のもとで理学博士に1979(昭和54) ノースカロライナ大学の博士研究員として渡米1981(昭和56) 東京理科大学の講師となり、研究室を構える東京理科大学へ1986(昭和61) 東京理科大学の助教授に1988(昭和63) 有機合成化学奨励賞を受ける1991(平成3) 東京理科大学の教授に1995(平成7) 英科学誌『Nature』に不斉自己触媒反応を発表硤合反応1996(平成8) 米国化学会誌に続く論文を発表1999(平成11) 天然の水晶を引き金に、片方の形を増やす2003(平成15) 左右の差がほぼ無い状態から、片方の形だけを生み出す2005(平成17) キラリティーメダルを受け、光を引き金にする実験も2007(平成19) キラルマテリアル研究センターのセンター長に2008(平成20) 英国王立化学会の『Chemical Science』でインタビューを受ける2009(平成21) 炭素の同位体による左右の差でも反応が偏ることを『Science』に2011(平成23) 日本化学会賞を受ける2012(平成24) 紫綬褒章を受章2016(平成28) 東京理科大学を退職し、東レ科学技術賞を受ける2017(平成29) 東京理科大学の名誉教授に名誉教授2021(令和3) 総説が『Symmetry』の2021年のベスト論文賞に2023(令和5) 野依賞と瑞宝中綬章2025(令和7) 日本学士院賞に選ばれる2026(令和8) ノーベル化学賞に決まるノーベル化学賞2026(令和8) 東京理科大学の栄誉教授に昭和平成令和
誕生 1950現在
アミノ酸や糖には、右手と左手のように鏡に映した関係にあって重ね合わせることができない2つの形(右手型と左手型)がある。生き物の体をつくるアミノ酸は全て左手型なのに、アミノ酸や糖を普通の反応で作ると右手型と左手型が同じ量できてしまう。どんな過程で片方ばかりになったのかは、生命の起源にも関わる謎とされてきた。その謎に、ごくわずかな左右の偏りを大きく増幅する反応で迫ってきた有機化学者である。広島県府中町に生まれ、東京大学で向山光昭のもと博士号を取得。1981年に東京理科大学の講師となり、以後この大学で研究を続けた。1995年、できた分子自身が触媒となって片方の形を増やしていく反応を発表した。1953年に数式だけで示されていた考えを、40年以上たって実験で実現したもので、この反応は「硤合反応」として知られる。2003年には左右の差がほとんど無い状態から片方だけを生み出すことに成功し、2026年、ノーベル化学賞に選ばれた。

同世代1995年、同い年の梅沢 富美男は、TBS『今夜もテレビで眠れない』に出演 →

歩み

府中町の附属校から東大の化学科へ

昭和25〜

昭和
1950昭和255月3日
満0歳

広島県安芸郡府中町に生まれる

広島県安芸郡府中町の出身。姓名の読みは、そあい けんそう。

1963昭和38
満12歳

広島大学附属小学校を卒業

そのまま附属中学校に進み、1966年に卒業して附属高校へ上がる。

1969昭和44
満18歳

広島大学附属高校を卒業

附属の小・中・高で12年間を共にした同学年に、のちの広島東洋カープオーナー・松田元がいる。卒業後は東京大学理学部に進む。

1974昭和493月
満23歳

東京大学理学部化学科を卒業

卒業後は同じ大学の大学院、理学研究科の修士課程へ進む。

出典tus.ac.jp
1976昭和513月
満25歳

東京大学大学院の修士課程を修了

理学研究科の修士課程を修了し、同じ研究科の博士課程へ進む。

出典tus.ac.jp

向山研で博士、ノースカロライナを経て理科大に

昭和54〜

1979昭和543月
満28歳

向山光昭のもとで理学博士に

東京大学大学院理学研究科の博士課程を修了し、理学博士となる。指導教官は向山光昭。同じ年、向山らとの連名で、アルデヒドに対する不斉付加反応の論文を発表している。4月からは日本学術振興会の奨励研究員として東京大学理学部で研究を続けた。

1979昭和5410月
満29歳

ノースカロライナ大学の博士研究員として渡米

チャペルヒル校のアーネスト・イライエルのもとで博士研究員となり、1981年まで米国で研究する。

1981昭和564月
満30歳着任

東京理科大学の講師となり、研究室を構える

帰国し、東京理科大学理学部第一部の講師に着任。ここで自身の研究グループを立ち上げた。以後、講師から助教授、教授と進み、この大学で研究を続けることになる。

1986昭和614月
満35歳

東京理科大学の助教授に

講師として5年を過ごした理学部第一部で、助教授に昇任する。この年、フランスのアンリ・カガンが、触媒の左右の偏りよりも、できた分子の偏りのほうが大きくなる現象を報告し、多くの化学者がこれを追い始めていた。硤合もその一人で、ある反応の触媒とできた分子の形がよく似ていることに気づき、できた分子自身が触媒になる反応を作れないかと考えた。

1988昭和63
満38歳

有機合成化学奨励賞を受ける

有機合成化学協会からの受賞。1990年には同じ協会の研究企画賞も受けている。

出典tus.ac.jp
平成 1989
1991平成3
満41歳

東京理科大学の教授に

教授に昇任する。

硤合反応の発見と、生命の偏りの謎へ

平成7〜

1995平成712月28日
満45歳転機

英科学誌『Nature』に不斉自己触媒反応を発表

できた分子そのものが触媒となり、自分と同じ形の分子を増やしていく「不斉自己触媒反応」を発表した。左右の形のうち片方がわずか2%多いだけの状態から始めると、反応後には差が87%まで広がった。こうした反応は1953年に物理学者チャールズ・フランクが数式だけで示していたもので、実験で実現するまでに40年以上かかった。この論文は、『Nature』が1950〜2000年に載せた化学の厳選論文35報の一つに選ばれている。

1996平成8
満45歳

米国化学会誌に続く論文を発表

前年の『Nature』に続き、自己触媒反応と大きな不斉増幅についての論文を『Journal of the American Chemical Society』に発表した。

1999平成11
満49歳

天然の水晶を引き金に、片方の形を増やす

天然の水晶には右水晶と左水晶がある。そのそばでこの反応を行うと、水晶の向きに対応した形の分子が大きく偏って増えることを初めて示し、米国化学会誌に発表した。生命の偏りのきっかけとして唱えられてきた説と、片方に偏った分子とを実験で結びつけた成果だった。翌2000年には井上学術賞と日本化学会学術賞を受けている。

2003平成15
満52歳到達

左右の差がほぼ無い状態から、片方の形だけを生み出す

1995年の発表から8年。片方が約0.00005%多いだけの状態から反応を3回くり返すと、分子は約63万倍に増え、差は99.5%以上に広がった。さらに左右の偏りを一切持ち込まずに反応させても、最初の偶然の揺らぎが増幅されて片方の形が勝つことを示した。どちらが勝つかは偶然で決まる。

2005平成17
満55歳

キラリティーメダルを受け、光を引き金にする実験も

右と左の円偏光(光の一種)を当てて反応を始めると、光の向きに対応した形の分子が大きく偏って増えることを米国化学会誌に発表した。この年、九州大学先導物質化学研究所の客員教授も務めた。

2007平成194月
満56歳

キラルマテリアル研究センターのセンター長に

東京理科大学の総合研究機構に置かれた、私立大学学術高度化推進事業による「キラルマテリアル研究センター」のセンター長に就く。同じ年、文部科学大臣表彰の科学技術賞(研究部門)を受けた。

出典tus.ac.jp
2008平成20
満57歳

英国王立化学会の『Chemical Science』でインタビューを受ける

3月31日付の誌面に掲載された。この誌のインタビューに日本人の科学者が登場したのは初めてだった。

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2009平成21
満59歳

炭素の同位体による左右の差でも反応が偏ることを『Science』に

炭素の同位体を入れ替えただけで左右の区別が生まれた分子を引き金にしても、それに対応した形の分子が大きく偏って増えることを示した。

2011平成23
満60歳

日本化学会賞を受ける

日本化学会から日本化学会賞を受けた。

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ノーベル化学賞まで

平成24〜

2012平成24
満61歳

紫綬褒章を受章

平成24年春の褒章で受章した。

2016平成284月
満65歳

東京理科大学を退職し、東レ科学技術賞を受ける

3月に退職し、4月から理学部第一部の嘱託教授として残る。この年度には東レ科学技術賞を受け、そのとき中高生向けの研究解説を自ら書いた。右手と左手で握手すると形が合わないことにたとえ、体のタンパク質に逆の形のアミノ酸が混ざると働けなくなると説明している。ほかの研究者が題名に「Soai Reaction」を入れた論文は、この時点で40報以上あった。

本人それは、左手型の分子が、自分と同じ左手型分子を作る触媒として働く反応です。左手型分子があたかも生命のように自己増殖するものです。 出典

2017平成296月
満67歳

東京理科大学の名誉教授に

東京理科大学から名誉教授の称号を受けた。

出典tus.ac.jp
令和 2019
2021令和3
満71歳

総説が『Symmetry』の2021年のベスト論文賞に

2019年に学術誌『Symmetry』に出した、不斉自己触媒反応とホモキラリティーに関する総説が選ばれた。受賞した総説2本のうちの1本。

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2023令和5
満73歳

野依賞と瑞宝中綬章

有機合成化学協会の高砂香料国際賞「野依賞」を受けた。この年は秋の叙勲で瑞宝中綬章も受章している。

2025令和73月12日
満74歳

日本学士院賞に選ばれる

日本学士院がこの日発表した9名の受賞者に選ばれた。対象は「不斉自己触媒反応の発見とホモキラリティーの成立起源に関する研究」。

本人本学において芽生え、発展した研究が高く評価されたことを、大変光栄に思います。 出典

出典tus.ac.jp
2026令和810月7日
満76歳受賞

ノーベル化学賞に決まる

スウェーデン王立科学アカデミーが、パリ・サクレー大学のアンリ・カガン名誉教授との共同受賞を発表した。授賞理由は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒反応の発見」。発表は、二人のおかげで、片方の形だけがそろう状態がどのように生まれうるのかが分かったとしている。発表によれば、カガンは1986年、右手型・左手型のうち片方の形をそれまで可能と考えられていた以上に偏らせて作る方法を見つけた。硤合は1995年に片方の形だけを生み出しうる初めての反応を発表した。知らせの電話には「人生で最も興奮する日」と答えた。同日、神楽坂キャンパスで会見を開いた。日本人の化学賞受賞は2年連続10人目で、広島県出身者として初の受賞者になる見込みと報じられた。

本人アンリ・カガン先生と一緒に受賞できるということがとても嬉しい 出典

2026令和8
満76歳近況

東京理科大学の栄誉教授に

10月、東京理科大学の栄誉教授となる。会見では日本の有機合成化学の研究土壌に触れたうえで、研究の続きを語った。直近の論文は2024年に出た不斉自己触媒に関するもの。

本人完全にまだ解明したわけじゃなくて、まだまだ分からない。面白いことがあるはず。 出典