岐阜での生い立ちと銀行員時代
昭和38〜
岐阜県加茂郡に生まれる
岐阜県で生まれ育った。
慶應義塾大学文学部に進学
文学部に入学後、法学部へ編入学し法学部でも学んだ。
大学の推理小説同好会に所属し、小説を書き始める
在学中に推理小説同好会に所属し、大学生活の後半になると自分でも小説を書くようになった。これがのちの作家デビューにつながる最初の執筆経験となった。
旧・三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行
大学卒業後、都市銀行の旧・三菱銀行に入行。同期には、のちに三菱UFJ銀行頭取を務める半沢淳一氏がいた。
三菱銀行を退職
約7年間の銀行員生活を経て退職。マニュアル化された銀行組織の風土に馴染めなかったことが理由と本人は語っている。退職後はコンサルタント業のかたわら、税理士・会計士向けソフトの監修やビジネス書の執筆を手がけながら小説を書き続けた。この銀行員としての実体験が、のちの企業小説群の土台となった。
作家デビューと企業小説家としての出発
平成10〜
— 『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー
都市銀行の内幕を描いたミステリーで第44回江戸川乱歩賞を受賞(福井晴敏『Twelve Y.O.』との同時受賞)し、35歳で作家デビューを果たした。銀行員経験を生かした業界小説というスタイルが、以後の作風の原点となった。
『果つる底なき』が初のテレビドラマ化
デビュー作がフジテレビ系でドラマ化され、映像化第一作となった。
半沢直樹シリーズ第1作『オレたちバブル入行組』刊行
銀行の融資審査と組織内の権力闘争を描いた企業小説で、のちに大ヒットシリーズとなる「半沢直樹」が誕生した。
『空飛ぶタイヤ』刊行、直木賞候補に
自動車メーカーのリコール隠しを題材にした社会派企業小説で、直木賞・吉川英治文学新人賞の候補となった。大企業の欠陥隠蔽に立ち向かう中小運送会社を描く構図は、以後の作品にも通じる一貫した視点となった。
半沢直樹シリーズ第2作『オレたち花のバブル組』刊行
半沢直樹シリーズの第2作。翌2009年、山本周五郎賞の候補となる。
『オレたち花のバブル組』が山本周五郎賞候補に
第22回山本周五郎賞の候補作に選ばれ、評価を固めた(受賞は白石一文)。
『鉄の骨』刊行
建設業界の談合問題を題材にした企業小説。翌2010年に吉川英治文学新人賞を受賞する。
直木賞受賞と半沢直樹ブーム
平成22〜
— 『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞を受賞
建設業界の談合を描いた同作で、直木賞候補にもなった。デビュー作の江戸川乱歩賞(新人発掘賞)とは異なる、中堅作家を対象とする文学賞の受賞となり、作家としての評価を大きく押し上げた。
— 『下町ロケット』で第145回直木三十五賞を受賞
中小企業の技術者たちが大企業を相手にロケットエンジン用部品の特許をめぐって戦う物語で直木賞を受賞。銀行員時代に多くの中小企業を見てきた経験が色濃く反映された代表作となり、この受賞を機に企業小説家として広く知られるようになった。
『ルーズヴェルト・ゲーム』刊行
経営危機に陥った電機メーカーの実業団野球部を軸にした企業小説。
半沢直樹シリーズ第3作『ロスジェネの逆襲』刊行
ネット企業による銀行の子会社buyout騒動を描いたシリーズ第3作。のちにドラマ第2期の原作となる。
— TBS系『半沢直樹』放送、最終回視聴率42.2%の大ヒットに
堺雅人主演で半沢直樹シリーズがドラマ化され、「倍返しだ」が流行語となる社会現象に。最終回の視聴率は42.2%、平均28.7%を記録し、平成の民放ドラマ屈指の大ヒットとなった。この大ヒットにより池井戸作品は全国的な知名度を得ることになった。
半沢直樹シリーズ第4作『銀翼のイカロス』刊行
航空会社の経営再建を舞台にしたシリーズ第4作。
TBS系『下町ロケット』放送、阿部寛主演で高視聴率
阿部寛主演でドラマ化され、平均18.5%・最終回22.3%を記録。中小企業の町工場が大企業と渡り合う物語が幅広い層の支持を集めた。
『陸王』刊行
老舗足袋メーカーがランニングシューズ開発に挑む物語。
ドラマ化の連発と近年の活動
平成29〜
TBS系『陸王』放送、役所広司が15年ぶり連続ドラマ主演
老舗足袋メーカーの新規事業への挑戦を描いた同作は、役所広司の15年ぶりとなる連続ドラマ主演としても話題を集め、半沢直樹・下町ロケットに続く日曜劇場原作者としての実績をさらに積み重ねる転機となった。
『下町ロケット ゴースト/ヤタガラス』が第2シリーズとしてドラマ化
阿部寛主演で続編がドラマ化され、シリーズとして再びヒットした。
TBS系『半沢直樹』続編放送、最終回視聴率32.7%
『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』を原作に7年ぶりの続編が放送され、最終回32.7%を記録(前作の42.2%は超えず)。本人は続編について、前作で出した結果を思うと「その栄光を汚すこともないのかな」とないものと思っていた、という趣旨をコメントしている。同年、野間出版文化賞を受賞した。
『ハヤブサ消防団』刊行
田舎町の消防団を舞台にしたミステリー。翌2023年に柴田錬三郎賞を受賞する。
『ハヤブサ消防団』で柴田錬三郎賞を受賞
企業小説の枠を超え、ミステリー分野でも評価を確立した。
新たな挑戦と現在
令和6〜
映画『シャイロックの子供たち』脚本で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞
自身の小説を原作とした映画の脚本を手がけ、脚本家としても高い評価を得た。
『俺たちの箱根駅伝』上下巻刊行
箱根駅伝の予選会を舞台にした群像劇で、週刊文春での連載(2021年11月〜2023年6月)を経て刊行された。企業小説の枠を離れ、スポーツを題材にした新境地の代表作となった。
講談社・集英社・ダイヤモンド社・文藝春秋の合同「池井戸潤プロジェクト2026」始動
四季ごとに新刊を連続刊行する出版4社合同企画が始動。春は『ブティック』(ダイヤモンド社)、夏は『ハヤブサ消防団 森へつづく道』(集英社)、秋は文藝春秋から未公表作品、冬は講談社から初のエッセイ集『劇場で会いましょう』が予定されている。
2年ぶりの長編『ブティック』刊行
週刊ダイヤモンドでの連載(2024年6月〜2026年1月)を経て刊行された長編小説。
『俺たちの箱根駅伝』が日本テレビ系で連続ドラマ化、放送開始
大泉洋主演の連続ドラマが日本テレビ系で放送開始(ドラマ化自体は箱根駅伝予選会翌日の2025年10月19日に発表済み)。箱根駅伝関東学生陸上競技連盟の全面協力のもと制作される。
60代を迎えた現在も新作を発表し続ける
出版4社合同企画「池井戸潤プロジェクト2026」の刊行を進めながら、10月には『俺たちの箱根駅伝』のドラマ化も控えるなど、デビューから四半世紀以上を経てなお第一線で旺盛な創作を続けている。